絵画関連の有害物質の発生状況


発生源別分類 発生工程 発生状況 処理・対策法
製造工程

原料配合時  絵具製造の場合などでは、粉体顔料の配合・ミキシング時に舞い立つ埃中に大量の有害物を含む場合がある。これは、全ての絵具に共通することではないが、有害性を持った顔料を配合する際には避けられない状況である。
 メーカーでは、局所排気装置などを使用して、作業環境への拡散を防いでいるが、局所排気装置に溜まったダストには、高濃度の有害性物質が存在する。
●有害性物質を含むダスト等をコンクリートで固め、有害物質に関して溶出しないことを確認した後、埋め立て処理する。
生産  絵具の生産工程で発生する有害物は、主に機械類に付着した絵具等で、色替えのために機械を洗浄する際に発生する。油絵具の場合は、灯油等を浸したウエスやペーパー類で拭きあげられるが、有害物で汚損したウエスなどと、これを洗うために使った灯油中に有害物質が沈殿する。
 水性絵具の場合は、水を用いて洗浄されるため、有害物を含む汚水が大量に生じる。

 また、洗浄に使われる有機溶剤が大気中に放出される。
×有害物質を含むウエスや紙等を焼却処理しては行けない。汚染物質が煙に紛れて微粉の状態で拡散したり、場合によっては水に溶けやすい形の化合物に変化してしまう可能性がある。
●できるだけ発生する汚染物質の量を減じる対策をとるとともに、汚れた灯油に関しては有害物を含む沈殿を濾別処理し、沈殿に関してはコンクリートで固め、有害物質に関して溶出しないことを確認した後、埋め立て処理する。
●汚水に関しても同様であるが、重金属類を回収処理できる廃棄物処理業者へ委託することも可能である。
廃棄  製品化されたものが廃棄される場合がある。製品のリニューアル等に伴い、旧ラベル表示のものが不要になったり、工場内のトラブルで販売不可能な障害が出たなど。
 チューブに入ったままの絵具、また、絵具を絞ったあとの有害物を伴ったチューブなどがこれにあたる。
●製品化されてから不要になったものに関しては、再使用できる場合には、目的の用途で使えるよう、ルートを見つける必要がある。例えば、発展途上国への協力なども喜ばれる。
●再利用できないものに関しては、有害物を含むもの、含まぬ物を確実に分別し、「生産」の項と同様に扱う。
流通・販売工程

破損

 流通時、店頭保管時の不注意な取扱いから、有害物質を含む絵画材料が漏出することがある。
 有害物を含む絵具(特に袋入り顔料、ビン入り絵具など)の破損
 
有害物を含む画溶液(特に有機溶剤系)の破損
    

●取扱いの不手際で汚損し、通常の販売ができなくなったものに関しては、価格を下る事などによってそれでも欲しがるユーザーに持ってもらうか、メーカーへの返送により処理してもらうのが望ましい。
●画用液などの破損では、処理が難しいが、有機溶剤の大気中への拡散を防ぎ、発火の危険性を避けるような処置が必要である。
廃棄  流通時に不要となった製品類の廃棄による発生。  通常は、製品のまま廃棄されている場合が多く、容器内に収まっている場合には大きな問題にはならないが、処理工場などで予期せぬ処理方法が取られると、汚染が広がる可能性がある。
●流通業者は、不要になった製品に関しては製造メーカーに返却し、処理を依頼することが望ましい。リサイクルされる可能性もあるからである。
製作工程



支持体制作  鉛白などを含む絵具を支持体に塗り、削るなどしてマチエールを作る際に粉塵として発生する。
 また、大きなキャンバス等に地塗り材を塗布する際に、大量の有機溶剤が蒸発する。
●まず、作業者の安全を図るべく、マスク、保護手袋等の使用を励行する。
●発生してくる粉塵は、局所廃棄装置(簡易には電気掃除機)などで、発生と同時に処理できるような環境をつくる。
●換気をよくする。
●でてきた有害物を含むゴミは、不燃ゴミとして処理する。可能であれば、廃棄物処理業者に回すべきことはいうまでも無いが…。
絵具使用  主に画用液中の有機溶剤の蒸発に伴う室内の環境汚染がもっとも大きな問題で危険性も高い。
 また、絵具の中に含まれる有害物が人体へ侵入する機会が増えてくる。
 稀な例であるが、アレルギーやアトピーをもつ過敏な人の極一部に、絵具の乾燥過程で生成する有害性物質(おそらくケトン系の揮発性物質と考えている)によって障害が起こることもある。
●換気をよくする。
●アトリエでの喫煙、飲食を慎む。
●皮膚への付着を避ける。付着した場合には、速やかに洗い流す。
用具洗浄  最も有機溶剤に曝される危険性の高いのが、油絵具等の筆、用具のクリーナーによる洗浄の時である。制作中の洗浄も、長時間に渡って有機溶剤の蒸発する雰囲気下に過ごすことになり、知らず知らずのうちに溶剤を吸飲してしまう。
 最近は、非有機溶剤系のクリーナーも販売され使用されてきている。使用中の危険性は、有機溶剤系のクリーナーに比べ低い。問題は、有害物を含んだ絵具等を洗ったあとのクリーナー自体の処理であり、水に分散しやすくなっている有害性物質の沈澱を、下水等に流してしまうことは汚染の拡大につながってしまう。
 水性絵具では、有害性の絵具を使用した後の用具の洗浄により、ダイレクトに有害物が下水道へ送り込まれる。
●換気をよくする。
●廃クリーナーの処理が未解決の課題になっている。
廃棄  パレットに残った絵具の廃棄や絵具のついた布、紙等、さらに使用済みクリーナーの処分など、制作活動の最中や後には、多くの不要なものが発生する。
 ペーパーパレットは便利であるが、使用後にはただの有害物付着紙に変貌する。
●ゴミとして捨てる際には、すべて不燃ゴミとして処理するのが現状では最も安全性が高い。学校や教室など、量的に多い場合には、適当な廃棄物処理業者を頼むべきであろう。
●使用済みのクリーナーは、有機溶剤系も非有機溶剤系も問題が大きい。
 有機溶剤系の場合には、布などに染み込ませ、いったん乾かしてから不燃ゴミとして捨てるのが現状では次善手であろう。
 非有機溶剤系に関しては、検討中であるが、結論が出ない。少なくとも、下水に流して処理することは絶対に行ってはいけない。
 基本的な考え方として、無駄な画材の準備は行わず、必要量を使用時に使うことが大切であるが、画面上で探り描きなどをしている場合や、色を突き詰めて考える場合などには、調色に失敗した色なども大量にでてしまうのも事実である。
 ひとりひとりが発生する量は少なくとも、大勢が無為に今の行為を続けると、環境問題の大切になっている今日の状況に逆行することになる。
 ひとりひとりの「意識」が積み重なって、解決への糸口になる。
展示工程 展示  油絵具の場合、生乾きの状態で展示せられた作品の表面からは分子量の比較的小さいケトン類が極微量発生している。一般的に健康な人体にはほとんど影響を与えぬほどの量だが、大量にできたての作品が集まる公募展の会場などでは、やや濃度が高まる可能性がある。また、大作を小さな部屋で描いている場合にも同様の危険性がある。
 アレルギーを持つ人や、体調を崩し、体力が落ちている人など、感受性の強い人に酩酊感やほてりなどを感じることがあるかもしれない。
 また、有機溶剤をまだ蒸発させているような出来立ての絵も会場にある場合がある。
●換気をよくする。

●出来立ての作品に関しては、搬入を断る・・・?

廃却  不要となった作品が打ち捨てられることがある。作品として展示されている時には、有害性物質も安定な絵具層中に保護されているが、いったん廃却されると有害物となる。
×キャンバスを焼却処分すると汚染物質が煙に紛れて微粉の状態で拡散したり、場合によっては水に溶けやすい形の化合物に変化してしまう可能性がある。


画材の有害性
有害性への対策
楽屋からの提言
1-1 問題の経緯 2-1 現状の法規制について 3-1 『アートなび』からの提言
1-2 問題の発生状況 2-2 画材表示を理解する  
1-3 人体への進入 2-3 有害物処理方法(試案




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