○テンペラグラッサ


15世紀のルネッサンス期になると、卵のバインダーに油性分を加え、絵具の伸びを改善する処方が開発されてきます。ルネッサンスのより自然主義的な写実表現にマッチした絵具に改良されます。
それまでの油性分を含まないテンペラ技法を総称して「テンペラ・マグラtempera magra」といい、油を加えたテンペラ技法を「テンペラ・グラッサtempera grassa」と別のジャンルとして大別しました。
テンペラ・グラッサの代表的な作品は、ボッティッチェリの「春」や「ビーナスの誕生」などです。

油性分を調節する(7〜15ml前後)ことで顔料の発色を明るくすることも濡れ色にすることもできるので、作家の表現に合わせて幅広い効果が得られます。バインダーの処方例は次の通りです。

 卵黄    1個分(通常サイズでは20ml) 
 油性分*   小さじ2杯 (約10ml)
 水      小さじ4杯 (約20ml)


■テンペラグラッサの特質
・水に溶けて、乾くと水に侵されない。
・比較的速乾性である。水分の蒸発により見かけの乾燥をする。
・卵黄テンペラよりも絵具の伸びが自由でぼかしやグレーズも可能。
・卵黄テンペラよりも堅牢である。
・油成分の混合比により(50%以上100%未満)油絵具との併用が可能となる。
・未乾燥の油絵具層上に水性の含油テンペラ絵具が弾かずにのる。
・細密描写や顔料の発色を生かした技法ができる。
・卵黄テンペラよりもやや明度に欠ける。

よく混ぜ合わせた上記のバインダーに水で練り合わせた顔料を1:1程度に混ぜ合わせると卵黄テンペラの絵具ができます。顔料によりバインダーの量は多少異なります。
石膏地に塗られた卵黄テンペラ絵具は、明るく不透明な発色をします。絵具にはあまり伸びがなく、彩色は通常ハッチングとよばれる線描の積み重ねで表現されます。絵具の伸びの欠如は、表現自体を生硬にする傾向があります。


■メディウムの作り方
1.卵を二つに割り白みとカラザを取り除いて黄みの成分をビーカーにとるのは卵黄テンペラと同じ。
2.黄みの量の50〜70%前後の油性分を加えます。
  (油性分:ダンマルバニス:2 スタンドオイル:1)
3.はじめは静かにしだいに強く卵黄と油成分を混ぜ合わせます。混ざるにつれて、粘りのあるマヨネーズ状の糊ができます。


■テンペラグラッサの絵具を作る
1.溶き皿に顔料を必要量とり、水を滴下し馴染ませます。指で練るように混ぜ合せます。
2.次に、卵メジウムを適量(普通は水練りした顔料と等量)加え指でしっかりと練りあわせます。
3.描く時に、水を加えて絵具の濃度を調節します。




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