○樹脂


絵画用の樹脂には、バインダーとしてもちいられるものと、色素として用いられるものがあります。
前者の代表的なものは、ダンマル樹脂で、ペインテイングオイルの材料として油絵具の乗りをよくし光沢と透明性を与えるものです。
後者の代表は、ガンボージと呼ばれる黄色色素で、水彩絵具に使われました。

天然樹脂は、動植物の分泌物として産し、複雑な組成をもっています。
現在は、より安定な合成樹脂に取って代わられる部分が多く、一部の特殊な洋画材料の素材として使われています。


樹脂名
写 真
解  説
ダンマル樹脂 マレーシア、インドネシアなどの東南アジア(インド、マレー地方)やモロッコ原産のフタバガキ科またはカンラン科植物から得られる天然樹脂の一種。19世紀初頭からヨーロッパでワニスとして使用され始めた。日本にはスマトラ産のものが多く入っている。
淡黄色から褐色のガラス質の脆い球状をしており、砕くと貝殻状に割れる。放置すると白い粉を吹いてべたついてくる。マレーシア産のものは、α‐Dammarresen 36%、β‐Dammarresen 20%、精油分1%である。天然樹脂の中で最も酸価が低く、色が淡いので絵画用のニスに好まれて使われます。テレピンや芳香族系の溶剤には完全に溶けますが、ペトロール等の脂肪族系溶剤には溶け切らないことがあります。比重:1.06。酸価:15〜35。融点:20〜150 ℃。
屈折率が高く、絵画に潤いと重厚感を与える点、マスチックより優れていたために19世紀末には主流となった。溶剤乾燥後は、べたつきの内クリアーな塗膜を形成する。通常ワニスは、20年ほどで黄変し、重合後は容易に除去できなくなるという。テレピンで溶解するより、ペトロールで溶解して作ったワニスの方が黄変しにくい。しかし、ペトロールでは溶解しきれない白色の濁りを生じるので、これを分離除去して使う。
塗布の際に曇る傾向があり、塗布時の湿度には注意を要する。
ダンマルは、燃やすとパチパチ音を立てて燃えすぐ消えるが、コーパルは黒い油煙を出しながら燃えつづける。

コーパル樹脂  

種種の硬質天然樹脂に付けられた名称で、地中から産する化石樹脂と生き木から採取され固まった樹脂がある。中世には「アンバー」という名も一部のコーパルに与えられている。コーパルは10世紀頃、アラビア人によって取引がはじまったと言われる。様々な種類のコーパルが存在し、産地の名を冠して呼ばれることが多い。
通常は、淡黄色から淡褐色の塊状で半透明である。ダンマルより硬質で化石樹脂の場合にはそのままで油に溶解しない。現在は、使用に際して350℃前後に加熱処理(Running)し、褐色の熱分解生成物を溶解する。
速乾性で、硬質の塗膜を作る油絵具のペインテイングオイルの原料として、また、箔下バニスの原料として使われている。
樹脂液が地中で化石したもの。採取の場所により品質が違う。熱によって解ける融点によって、硬質・軟質に分かれます。硬質は、溶剤にとけにくく、油溶性に変えるまで処理が必要だが、軟質樹脂と比べると、乾燥性・耐候性にすぐれています。
コハク

 2〜300万年、場合によっては数億年前の化石樹脂で、ほとんど溶剤に溶解することのない樹脂である。独特のコハク色で透明性が高い。溶解するためには、コーパル同様300〜400℃でランニングしなくてはならない。→アンバー
マスチック樹脂    
グッタペルカ

東南アジアに産するアカテツ科の植物の樹皮に傷をつけ、流出するゴム液を固めて得るゴム。グッタとよばれるゴム状炭化水素を主成分として60℃で軟化する。
アラビアガム   アカシア科の植物「アラビアゴムの木Gummi Acacia Senegal(L.)willd」などの幹や枝に傷をつけ1週間ほど放置し、流出・乾燥固化したものを採取する天然ゴム。11〜12月と3月頃に採取される。淡黄色から赤黄色の透明な塊で、球状や円筒状をしている。中央アフリカのスーダン・コードファンKordfan地方に品質の良いアラビアガムが取れる。周辺国でも近似の樹脂が得られるが、スーダン産のものが水彩絵具には適している。14世紀以降に用例が見られ、1713年、ボナーニ Bonanniという修道士によりローマで出版された「ニス概論 Traie* des Vernis」に記述がある。
水溶液は酸性を示す。絵画用バインダーとしては保存性を高めるため、通常、pH調整して用いる。樹脂のみの塗膜は鉛筆硬度5H。
アラビン酸 C5H10O5 約80%に15%前後の水分とその他灰分などを含む。
アラビアゴムは水に良く溶け、接着性が優れているわりに粘りが少なく、筆捌きのよい絵具をつくる。薄い塗膜で優れた接着力を示す。また、7%〜40%以上の濃度で、それぞれ透明性・隠蔽性の異なる絵具ができる。濃い濃度では色彩に光沢と輝きをあたる。

チェリーゴム

   
     

ガンボージ

  タイやインドなどのオトギリソウ科植物Garcinia,hanburiiの幹から得る赤黄色の塊状固体。80%の有色樹脂、13%のゴム、残り水分から成る黄色の植物性レーキ顔料。色剤と媒剤の二つの働きをする。セイロン、タイに産する樹木より分泌する樹液を固化したもの。水彩絵具として好まれ使用されたが耐光性がない。
紙や羊皮紙に金箔を置く際、ガンボージで箔置きの部分を濃い金色に着色する。乾燥後、息を吹き掛けるとこの部分は湿気を吸い、金箔を貼る糊の役割りをはたす。また、アルコール系ニスを黄金色に着色する。透明水彩絵具にも使用された。
ヨウ素価:71〜116。酸価:79〜100。エステル価57〜67。ケン化価:1.48。エタノール等のアルコール類に溶け、水には乳化する。有害性がある。雌黄ともいう。

サンギ・デ・ドラゴ
龍の血

マレー半島、スマトラ島、ジャワ島、ボルネオ島などの東南アジアにある、ある種の樹木の果実から分泌される深赤色の樹脂。樹脂には約60%のレジンを含む。アルコール、ベンゾールに可溶。融点100℃。酸化約137。金属用揮発性ワニスの着色に使用された。現在の主な用途は、バイオリン用の仕上ニスの着色である。
アルキド樹脂    
アクリル樹脂   アクリル酸樹脂・・・アクリル酸、又はメタクリル酸のエステルを重合して得られる樹脂。溶液重合・乳化重合により得られる。アクリル酸メチルエステル樹脂は、アセトン・酢酸エチル・ベンゾールに溶け、石油系溶剤・アルコール等に不溶です。メタクリル酸メチルエステル樹脂は、耐水・耐油性・耐アルカリ性にすぐれているが、付着力が乏しい。
ケトン樹脂    


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