○膠(にかわ)



日本画のバインダーとして用いられる膠類は、洋画技法でも使用されます。「ゼラチン」または「サイズ」と呼ばれるものは純粋なものであり食用にもなります。
「グルー」と呼ばれるものは多少の不純物を含み、接着剤や媒質に使用されます。
クサカベでも数種の膠を販売致しております。その主な特長と用途についてまとめました。

膠は、動物の皮革や骨髄から採られる強力な糊です。主成分は、コラーゲンという蛋白質の一種です。
本来、接着剤としての用途が中心ですが、絵具や絵画下地のバインダー、また、膠をさらに純粋に生成した「ゼラチン」は食用や写真用にも使用されます。
一般的に、絵画用に使用される膠は、骨よりも皮から採ったものの方が耐水性があり、 純粋に生成されたゼラチンよりも、多少不純物を含む手作りの膠の方が柔軟性に富んでいて適しています。
日本画では、「鹿膠」や「三千本」といった独特のものが使われ、洋画技法では、「ウサギ膠」が代表的です。絵画用として使用される主なものは次のようなものです。



鹿膠(シカニカワ・日本画用)
 
1cmほどのサイコロ状の膠で、透明性に優れ接着力が強いので絵具のバインダーに向いています。壁面や木面の絵画作品に多く利用されていいます。良質の洋膠を二次加工し、湿潤剤等を加えて作ります。透明度、接着力ともに優れており、腐敗しにくい特長がある。
三千本(牛皮膠・日本画用)
主に日本画用の膠で、棒状の形態をしています。鹿膠の方が絵画用に向いているという作家もいますが、手に入りやすい点で多くの日本画家が使っています。棒状に乾燥させた膠で一本15g。接着力は粒膠、鹿膠よりやや弱いが穏やかに効く。
ウサギ膠
兎の皮革を煮出し、加水分解してつくります。色が薄く、膜が柔軟性に富んでいますので、テンペラ画等の石膏地、白亜地のバインダーとして使われます。絵画技法書には「トタン膠」の名称で出てくることがあります。
特に精製した「精製ウサギ膠」もあり、ほとんど膨潤なしでも溶解でき白亜地等の作製の時、気泡がはいらず便利です。
パール膠粒膠
牛を起源とする粒状の膠。ウサギ膠より膨潤が容易。比較的に価格が安いことから、ウサギ膠の代用に用いられます。生産時期により、膨潤温度が異なる場合があります。
粉末膠
牛の皮から採られた美術用の膠です。色はウサギ膠よりも濃く劣りますが、接着力や硬度が似ており、ウサギ膠の代用として絵画下地塗料に多く使用されます。
魚膠
スズキ科の海魚「にべ」から採られる魚膠で接着力に優れています。粒状であり、膨潤させなくても15〜20分前後で60℃の水に溶けます。三千本などより接着力が強く、腐敗しにくく、扱いやすい材料です。
膠質の輸入品を二次加工したもの。


洋画材料には、4種類の膠(ニカワ)製品がありますそれらを性質や用途によって示したものが次表です。

 

組成由来

色味

接着力 柔軟性

備考

ウサギ膠 イタリア産兎皮膠 淡黄色 高価
パール膠 日本産牛膠・粒状 中濃黄色 高価
高級粉末膠 日本産牛膠・粉状 中濃黄色 高価・精製品
粉末膠 日本産牛膠・粉状 中濃黄色 安価・不純物多い

膠類は主にテンペラの下地用の材料として使われますが、水性絵具のビヒクル剤(糊)としても使用可能です。三千本や鹿膠を使う技法が日本画にありますが、西洋でもにかわを糊として使った絵具「デトランプ」や「グルーテンペラ」があります。
下地用として最も適しているのはウサギ膠で、色が薄く、しかも接着力に優れ、乾いた膜には柔軟性があります。やや不純物を含むので、この膠水には、多少の濁りがありますが、下地用としては問題になりません。
粉末膠は、日本製の牛の膠で、高級品は特に精製された不純物の少ない材料です。これで作った膠水は、美しい透明な溶液になります。下地用としてはもとより、水性絵具のバインダーとして好都合です。
粉末膠は不純物が多くあり、膠水を作ると濁った溶液になります。しかし、下地用として用いるには大きな問題にはなりません。教室での講習用や練習用として、安価さがお得です。
パール膠も精製した高純度品です。4種の中では最も接着力が強く、板に布を貼ったり、油性絵具の絶縁層を作ったりする場合に有用です。

  一般的には、ウサギ膠を使用すれば、画用として幅広い用途に使うことができるでしょう。膠の選択は、接着力や接着時間、ベタつきの加減や色など作家の好みの問題が多く、使ってみてからの使用感を大切にして薦めたいと考えます。



膠のときかた

@一般に、処方量の膠に水を加え、一昼夜放置します。水を含み膨潤すると寒天状になります。
A湯煎器を用いて60〜70℃で溶解させます。
B絵画用バインダーとして用いる場合は綿布やストッキングでろ過して使います。地塗用のバインダーの場合は、ろ過をせずに白色顔料や体質を混ぜて使用してもかまいません。
注意点1:70℃以上に過熱しない。膠が変質し接着力が落ちてしまいます。     
注意点2:膠水は製造後数日間は冷蔵庫で保存ができます。凍結させないように冷蔵します。凍結させてしまうと接着力を失います。                 
注意点3:夏季や湯煎後、35〜40℃前後で放置すると直に腐敗してしまいます。腐敗臭や黴が発生した膠水は、接着力が落ちるだけでなく、それを使用した画面にも被害を与える可能性があります。決して使用しないようにしなくてはなりません。

注意点4:ドーサ液を作る場合は、膠を溶解した後、膠水の温度が下がってから明礬を加えます。熱いうちに入れてしまうと効きめがなくなることがあります。



膠の用途別処方例

・バインダーは、顔料に混ぜて膠絵具を作る際の膠水濃度。
・地塗用バインダーは、絵画下地製作用。
・ドウサ液は下地の吸収調整用の時の処方。

  絵具用バインダー 地塗り用バインダー  ドウサ液 
ウサギ膠 膠7g+ 水100g 膠10g+水 100g 膠2g+ 水100g
パール膠 膠5g+ 水100g 膠10g+水 100g
粉末膠 膠5g+ 水100g 膠10g+水 100g  
三千本 膠10g+水100g   膠4g+ 水200g +明礬1.3g
乾燥鹿膠   膠4g+ 水200g +明礬1.3g


■参考価格
ウサギ膠 1kg   6000 円
精製ウサギ 膠 1kg   7000 円
パール膠   1kg   6000 円
高級粉末膠  1kg   6000 円
粉末膠    1kg   3800 円
   
三千本    1kg   2300 円
乾燥鹿膠 1kg   7000 円 


戻る


このページの無断転用は固くお断り致します。