■ピグメントの毒性
ピグメント(顔料)の毒性は、既に練り上げられた絵具として扱う場合より、粉体として扱う場合に危険性が高い。
美術工芸の分野で使用されるピグメントには、カドミウム化合物や鉛化合物およびクロム化合物といった毒劇物に指定されているものも含まれる。
市販のピグメント類のうち、取扱い上注意を要するピグメントには以下の様なものがある。(詳細は別表1参照)
(毒物)
|
砒素化合物
|
コバルトバイオレットライト
セレン化合物
カドミウムレッド系
水銀化合物
(硫化水銀は除く)
|
(劇物)
|
カドミウム化合物
アンチモン化合物
クロム酸塩類
鉛化合物
マンガン化合物
|
カドミウムイエロー系
ネープルスイエロー
クロムイエロー系
クロムグリーン系
シルバーホワイト
マンガニーズバイオレット
セルリアンブルー
|
(PL)
|
溶解性コバルト
|
コバルトブルー系
セルリアンブルーなど
|
絵具(顔料)の毒性には、次の法的規制がある。
『毒物および劇物取締法』 厚生省 ――― 毒物・劇物・特定毒物
『労働安全衛生法』 労働省 ――― 特定化学物質(特化物)
《毒物》 ラットに経口で薬を与え、24時間ないし48時間後に50% のラットが
致死する薬剤が体重1Kgあたり30mg以下の毒性を有するもの。
LD50=30mg以下/ Kg
《劇物》 ラットに経口で薬を与え、24時間ないし48時間後に50% のラットが
致死する薬剤が体重1Kgあたり 300mg以下の毒性を有するもの。
LD50=300mg 以下/ Kg
《特化物》毒性が強く、過去に事故発生事例のある特定の化学物質49種。
■緊急処置
眼に入った場合;直ちに流水または洗眼器で15分以上洗眼する。必要なら医者の手当を受ける。
皮膚に付着した場合;直ちに汚染された衣服や靴等の汚れを落とし付着した部分を石鹸水で洗浄し、多量の水で洗い流す。汚染した衣服類は、他の洗濯物と区別して洗浄した後着用する。
吸入した場合;空気のきれいな汚染のない場所に移動し、充分に鼻をかんで、うがいをする。かならず医師の診察を受けるようにする。
飲込んだ場合;充分にうがいをすると共に多量の水を飲ませ、吐かせる。医師の手当を受ける。
■漏出時の措置
飛散した場合は拡散防止に努めるとともに、早急に回収する。散水等により粉塵の発生を防止し、スコップ、ほうき、掃除機等で補集後廃棄する。
■取扱および保管上の注意
取 扱; 吸入・皮膚への接触を防ぐため、防塵マスク、保護手袋等を着用する。
粉塵が発生しないように丁寧に作業する。作業場から外へ、手袋等の汚染された
保護具を持ち出さない。
有害顔料を扱いながら、飲食、喫煙等を行なってはいけない。
こぼしたら、直ちに掃除する。
作業終了後は、充分に手を洗い、うがいをする。
保 管; 湿気の少ないところに保管する。
容器を破損しないようにする。
開封の状態で放置しない。
酸との接触を避ける。
飲食物のそばに置かない。
小児の手の届かないところで管理する。
保護具;呼吸用保護具−防塵マスク(国家検定品)
保護手袋−ゴム手袋
保護服−長袖(皮膚の露出を避ける)
■輸送上の注意
運搬に際しては容器の漏れのないことを確かめ、転倒、落下、損傷、加圧がないように積み込み、荷崩れの防止を完全に行なうようにする。
必要に応じて、法規の定めるところの表示を行なう。たとえば、カドミウム系顔料を船舶または航空機により輸送するばあいは「Un」マーク入りの容器で搬送する。
■廃棄上の注意
毒劇物の廃棄に関する基準に準じて処理する。
自己で処理できない場合は、産業廃棄物処理業者に委託する。
また、製品の付着した使用済みの容器や袋、およびその焼却残渣には有害物質が含まれるので、そのまま外部に流出しないようにする。
|