○主な絵具の構成要素と特長



■ 溶剤によるバインダーの分類
大きく分けると、水彩絵具や日本画絵具の水溶性バインダーと油絵具やアルキッド絵具のような油溶性バインダー、および一部のメタリック絵具に用いられるアルコール溶性バインダーがあります。
バインダーを溶剤で分類することは、制作過程における絵具の調整方法と併用可能性、さらに下地の選択に重要なポイントを示します。また、用具の始末の方法も絵具の溶剤型によって扱いが変わります。
 
絵具
色素
(発色成分)
バインダー(定着成分)
溶剤
塗膜
形成
形式
耐溶剤性
(乾燥後)
特徴
油性
顔料
テレピンなど
酸化
重合
乾性油の酸化重合により固化。
アルキド絵具
顔料
アルキド樹脂
テレピンなど
蒸発
重合
溶剤の蒸発により固化。
工業用漆
顔料
   
蒸発
重合
溶剤の蒸発により固化。
水性
顔料
 
複合
重合
水が蒸発し見かけの乾燥の後、酸化重合。
顔料
 
複合
重合
 
顔料
アクリルエマルション
 
蒸発
重合
水の蒸発により自己重合。
ビニル絵具
顔料
ビニル樹脂
エマルション
 
蒸発
重合
水の蒸発により自己重合。
顔料
 
蒸発
×
水の蒸発により樹脂固化。
顔料
 
蒸発
×
水の蒸発により樹脂固化。
日本画絵具
顔料
 
蒸発
×
水の蒸発により樹脂固化。
デトランプ
顔料
 
蒸発
×
水の蒸発により樹脂固化。
ポスターカラー
顔料+白顔料
 
蒸発
×
水の蒸発により樹脂固化。
学童用水彩
低級顔料+白土
デキストリン
 
蒸発
×
水の蒸発により樹脂固化。
熱可塑性
エンコウスティック
顔料
ロウ類
   
熱によりロウを溶解、冷えて固定する。
無バインダー
顔料
(耐アルカリ性)
なし
   
フレスコ技法では、支持体の漆喰地の乾燥に伴い、水で溶いて塗られた顔料が下地に閉じ込められて定着するため、バインダーという概念の材料は加えられていない。


■バインダーの塗膜形成の形式による分類
絵具の特性の多くは、バインダーの塗膜形成形式により大きく影響されます。その主なものは次のようになります。
塗膜形成形式
絵具名
解 説
蒸発固化型
水彩絵具
日本画絵具
デトランプ
メタリック絵具
バインダーの樹脂類が溶剤の蒸発とともに重合反応を起こし固化定着するタイプの絵具です。アクリル絵具が代表的なものです。
重合という化学反応を伴うため、同じ溶剤による再溶解が起こらないことが特長で、絵具層も強靭なものが多いといえます。アクリル絵具の場合、未乾燥状態では水で薄めたり洗い流したりできますが、乾燥後(重合後)は耐水性の極めて強い塗膜を形成します。
このタイプの絵具の乾燥速度も溶剤の蒸発する速度にのみ影響されますので、一般的には速乾性です。また、絵具内にかなり多量の溶剤成分を含んでいることから、乾燥後の塗膜は体積の減少を伴い、多少やせて貧弱に感じられることがあります。
蒸発重合型
アクリル絵具
ビニル 絵具
最も単純な塗膜の形成形式です。溶剤に溶けていた樹脂類が、溶剤の蒸発により透明な膜を形成し定着するものです。
水彩絵具をはじめ、古くから存在する絵具類の多くがこのタイプに属します。水彩絵具の場合は、水に溶けていたアラビアガムが糊の役割を果たし顔料を定着します。
この時、バインダーに含まれるアラビアガム(樹脂)の濃度が絵具の透明性を左右し、透明水彩や不透明水彩などの違いがでます。
このタイプの絵具の乾燥速度は、溶剤の蒸発の早さにより、また、一度乾いた絵具層に同じ溶剤(水彩絵具の場合は水)をかけると再び溶解してしまいます。
酸化重合型
工業用漆
油絵具
油絵具を代表とするタイプです。バインダーの乾性油は大気中の酸素を取り込み酸化重合という化学反応を起こして固化します。この化学反応は単なる蒸発よりも時間がかかり油絵具がかなり長い期間、未乾燥の状態で描く続けられるという特長につながります。また、絵具自体に溶剤成分を含まないため乾燥に伴う体積減少がなく、重厚な表現になりやすいといえます。
複合重合型
テンペラ絵具
アルキッド 絵具
テンペラ絵具の場合などがこれに当たります。水の蒸発により水の乾燥工程をとります。アルキド絵具の場合は、油彩のように乾燥し、塗膜中の油脂分が時間をかけて酸化重合し耐水性の強い膜を形成するという2段階の溶剤による2段階乾燥です。



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