2.厚紙に油絵具で描く効果 
 厚紙に油絵具で描くと、どんな効果があるのでしょうか。ローロレックの同時代の作品で比べてみましょう。
 右は、普通のキャンバスに描かれた油彩です。暗い部分は比較的薄塗りで透明感があり、肩のハイライト部のように明るく描きたいところでは、ホワイトの絵具を厚く使っています。これが、近代的な油絵具の普通の使い方です。
 しかし、厚紙に描く際には、油絵具の油分が紙に吸われてしまうため、色は明るく不透明に発色し、この絵ではパステルかガッシュのような色になっています。ガッシュやパステルと異なるのは、被覆の強さが絵具の厚みにより変化し、顔などの特に念入りに絵具を重ねたところだけは、油絵の特徴を残したみずみずしさが漲っています。ここでは、厚紙の色が利用され、前面に絵具が塗られていないことに気づくでしょう。これは、厚紙に油絵具で描いて保存性をよくするためのポイントのひとつです。

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           「踊り子ガブリエル」       「白いブラウスの赤毛の女」
           厚紙に油彩 (1890)      キャンバスに油彩(1889)

 厚紙と同じような効果が予想される基底材には、漆喰壁や白亜地などがあります。
 共通した特長は、絵具が置かれる下地の吸収性ということであり、絵具の中に含まれる展色剤(膜を形成して顔料を固着する役割りの材料)を吸い込む力が強いことです。
 デメリットについては、1.のタブーで述べた通りですが、タブーを冒しても見合う魅力的な「表現」があれば、これはひとつの技法になります。
 厚紙上の油絵具表現の特徴
     1.明るく強い発色をする。(時にはガッシュ様の発色)
     2.半被覆の効果が美しい。(油絵具の隠蔽性が増す)
     3.厚塗りを必要とせずにフラットな表現ができる。
     4.絵具が浮き立つハッチング効果。
     5.マットな表現。
 まとめると、油絵具を用いているにも関わらず、画面上では不透明性が強く、マットで明るい表現になります。

 

3.厚紙上の油絵具発色のメカニズム